Art Work

「花の頃に – 出会いの場所 HIROSHIMA」 2012 「雪の座 – 在ることについて FUKUSHIMA」 2014




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vol.2参加作品

コンセプト

数年前、私にとってもう一人の母のような存在の伯母が他界した。伯母はいつも強く優しく、過去に彼女の人生に降り掛かったことについて私に語ることはなかった。私は広島に生きた一人の女性の人生を想い、彼女と再び対話するための場所をつくり始めた。踊りが好きだった伯母の桜色の絹帯を解き、また縦糸と横糸を紡ぎ合わせ、かたちにしていく。もう一度、約束した花の頃に出会い、語り合うために。

会津地方の冬は、私が現在暮らしている雪深い土地の景色や日常と重なり、あらためて、土地の風土が人々の暮らしぶりや精神性をも形成し続けていくということを強く意識させた。古い蔵に残された人々の生活の記憶と痕跡に触れ、私もこの地域の人々が古くから行ってきたように「棉」を「綿」にするため自ら種を取り、綿を打ち、糸を紡いでいくことにした。棉を通して日々の暮らしに寄り添い、そこに依然として在りつづけたものの姿を想う時、伯母の生きざまが重なって見えた。
綿は白く柔らかく、雪のように儚げだが、ただ変わらず人とともにそこに「在る」と感じた。

森は人々の記憶と精神を繋ぎ、その存在の意味を私に伝え続けてくれる。


アーティスト
小林花子