vol.2参加作品
豪雪の長い冬を繰り返し経験している人は、自然の威力を知っている。その厳しい気候を受け入れながら生きるのは、決して簡単なことではないはずだ。会津地方に関わり始めた私は、少しずつ人々の葛藤する本音に触れる。彼らは、半年の長い冬を耐えるからこそ、春から秋の輝く季節の一瞬一瞬を慈しむ。自然環境が見せる細かなサインを読み取り、暮らしに活かす工夫をするのは、そびえる山々や手加減のない自然現象に対する畏敬の気持ちと、自分たちもこの地球環境に生きる生物、ヒトなのだという自覚からではないかと想像する。
縄文時代よりこの地方に人が暮らし始めて今日まで、長い時間をかけて醸成し、時間という淘汰を受けて今に至った基層文化は、人々のこのような意識が投影されたものなのだろう。人間以外のあらゆる生き物も、スピリットも、等価、あるいは敬う対象として。雪に埋もれる冬のおかげで、人々は内省し、ものごとを書き記したため、会津地方には文書がよく残されているという。この地に深く根をおろした言い伝え・祭事・唄・物語などを読み解き、人々の心根を探りたい。そして、そのなかに他の北国と響き合うものを探し当てたい。
アーティスト
丸山芳子