3名の東北生まれのアーティストがこの夏、異分野にアプローチし、感受し、作品に反映させて行った過程を紹介しました。
司会進行は実行委員会の金親丈史さん。
アーティストと作品(左から)/
小野良昌:
会津地方の人々へのインタビューを元にした映像作品や、「精神の<北>へ」記録映像(後方)を紹介。
有機農業の長谷川浩氏にリサーチ。
千葉奈穂子:
昭和村のからむし織の行程や、喜多方市の歴史的な地を撮影した写真作品。手漉き和紙にサイアノタイプ技法でプリント。
歴史考古の山中雄志氏にリサーチ。
丸山芳子:
昭和村の希有な環境と、聞き書きされた不思議な出来事の話をもとに、転写やコラージュを取り入れた絵画作品。
地域学研究の菅家博昭氏にリサーチ。
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会場の会陽館。既存の古民家を改修し、利用価値の高いスペースに生まれ変わりました。
天井が高い蔵づくりの落ち着いた雰囲気の室内と、庭に面した縁側がくつろげます。
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小野良昌:
「“精神の<北>へ”というタイトルから、何を思い浮かべたり語るのか、100人の話を聞いてみようと。100人ぐらいやると、人の声がどんどん積み重なって、クラブか何かで流せるような(笑)ノイズであり、絵にならないかなあって、思っているんですよね。そういう一つの集合体の中から、何かを選ばないといけないのかもしれないし、それぞれを尊重しながら、何か作り上げていかないといけない・・・」
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千葉奈穂子:
「私は記憶というものはそんなに鮮明ではない、部分部分が積み重なって浮かんでくるもの、というイメージがあったので、この素材を選んでいます。昭和村のからむし織は600年続いていると・・受け継いでいる人、そういう素材としての植物があることに共感しました。1000年の歴史がある熊野神社の注連縄。縄とか人のつながりとか、ずっとつながってくることに興味を覚えて。
高校まで住んでいた岩手県水沢市の跡呂井(あとろい)地区に、かつてそこにいたアテルイのこととか、中央政権がやってくる前の歴史や文化は、どういうものが残されているのか、東北の中で見つけて行きたいなあと・・・」
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丸山芳子:
「昭和村に降り立った途端に聞こえてくるのは、騒音ではなくて、ずっと途絶えないで流れている沢の水音。熊が出るかもしれないという緊張感は、本能を呼び起こされるみたいで・・。雨が上がると地面から水蒸気が一斉に空に還って行くような、そういう自然現象や動植物が渾然一体となって一緒になってこの時を生きてる・・ひとつの生き物として、自分がここにいるんだなって思い出させられるような体験でした。
それと、お年寄りが実際に体験した、ちょっとふしぎな話を書き起こした百二話の「会津物語」のように、尋ねなければ消失していく伝承を書き残す地域学に触れて、今までになくワイルドな作品になったんです。」
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観客の方々へのアンケートの最後の質問・・・「あなたにとって、<北>とは?」
これまでなら、絶句されたかもしれないこの問いに、今回ほとんどの方が、想像の翼を広げてご自身のイメージを書いてくださいました。いくつもの、ポジティブな<北>のイメージは、このプロジェクトへの応援にも思えます。
2014.09.23