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東京都美術館での開催 撮影:川崎三木男

まちがいなく、過去6回のなかで最も充実した開催でした。なぜなら、今回の参加アーティスト9名は、このプロジェクトのスタートまでさかのぼって、これまでの海外からの参加作家や多様なかたちで関わりを持った表現者のなかから、今回のテーマにフィットするメンバーを組んだのですから。そして、視覚と聴覚と、動きによる時間の連なりや、音の反響による空気感、会場外から侵入する音や階上から様子をうかがう人の姿もが、表現空間を有機的に豊かにする要素となった、奇跡のような出来事でした。
毎日がライブ感のある開催で、連日連夜、翌日の準備が必要だったため、開催中の高揚を記すことができませんでしたが、「ニュース」の記録やfacebookページから想像してみてください。(撮影:川崎三木男さん)

 

 

 

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

【5月17日】午後、スウェーデンからアマンダ・ビルバリが到着。約1ヶ月の日本滞在で、西会津町(福島県会津地方)と東京での制作と発表をします。これまで海外からアーティストを招く場合は3人でしたが、今後の継続可能な活動方法を探り、コンパクト化を試みるため、今回は彼女ひとり。運営経費や気苦労が軽減される上に、じっくり向き合えたと思います。

 

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

【5月19日】西会津町に移動した翌日から、さっそく町のリサーチに取りかかります。実行委員会メンバーの阪下昭二郎さんの案内で、町の南側に点在する弘法岩屋、鳥追観音、蝦夷神社、大山祇神社などを回りました。アマンダは会津の風景の中でのダンスを映像作品にしたい希望があり、その視点でフィットする場を探します。
私(丸山芳子)の一番のおすすめはこの写真の大山祇神社。太い杉古木の参道は足元の石まで苔むして、野趣と神聖な気に満ちています。リーフレットに使った写真もこの場所。

 

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撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

【5月20日】翌日も撮影ポイントのリサーチ。芸術村事務長の星眞智子さんの案内で、今度は町の北部を回ります。星さんおすすめの弥生には、小川の周辺に神秘的な雰囲気が保たれている急流があります。アマンダはすぐにカメラに三脚をセットし、ダンスの身支度をして撮影に入りました。思いがけず撮影現場を目撃でき、被写体になるだけでなく、こうやって撮影も音の採取も編集もすべて自分でするアマンダの力量を再認識しました。

 

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影を終えて、映像や音の素材が揃ったアマンダは、編集作業に入ります。この映像は東京都美術館で彼女の作品として投影されます。

私たちが芸術村での公開日までに制作できるのは正味8日間程度。日々テキパキと事を進めないといけない。
そう思いつつ、この地域に滞在しているという貴重な機会をもっと地元の方との交流にあてたい!アーティストとしてはこのような機会だからこそ、思い切りここで表現したい!そして日数と経費の制限もある…こんなジレンマがいつもあります。

 

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

【5月21・22日】丸山芳子は、人間と人間以外のあらゆる存在が向き合う光景を、石膏片で表現する2組のジオラマで作ろうとしています。そのシンボルのように立つのは、人間の足と、人間が向き合おうとする「他者」の足。動植物やスピリットや伝承の神様や天体などのあらゆるものを象徴する「他者」の足には、ダンスで鍛えたアマンダの筋肉質で少し大きめの足がぴったり!ということで、型取りさせてもらいました。

 

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

【5月22日】地元のケーブルテレビが取材に訪れました。「北欧の国スウェーデンからやってきた美しいダンサーを、みんなで見に行きましょう!」という筋書か?ともかくアマンダをロマンチックに演出して撮って行きました。丸山の出番はこの作業シーンだけ。24日の放送を見て、アマンダはもっとマッチョなダンサーだよね〜ふたりで大笑い。

 

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影:丸山常生

撮影:丸山常生

【5月25・26日】廊下の水道前で石膏片をつくる丸山芳子から見える、アルミホイル片をつくるアマンダと、公演の音響環境を整える西会津サウンドネットワークの加藤英二さん。それぞれが作業中。

 

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

アマンダと矢部さんは映像用に暗幕を取り付け、丸山常生も芸術村入りしてパフォーマンス用のセッティング。

 

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

【5月27日】 公開イベント当日。午前中に伊藤勝町長と伊藤善文商工観光課課長が来場され、アマンダの映像に興味を示して行かれました。

 

撮影:アマンダ・ビルバリ

撮影:アマンダ・ビルバリ

出演者のひとりがアクシデントで遅れそう!肝を冷やしたけれど、矢部さんの機転で別の交通手段が提案され、切り抜けられました。よそものの自分たちだけだったらこうは行かないはず。地元の方々との恊働の大切さを実感します。
あとはみんなの無事の到着を待つだけ。
(開催の様子は「ニュース」をご覧下さい。)

撮影:アマンダ・ビルバリ

撮影:アマンダ・ビルバリ

西会津国際芸術村は、最寄り駅や繁華街から車で15~20分の距離がある山間地域寄りにありますが、そのユニークな活動と発信力によって注目され、多様なメディアで紹介されています。
ディレクターの矢部佳宏さんには2014年から「精神の〈北〉へ」に関わっていただいています。運営人材や資金の確保が容易ではない現状におけるプロジェクトの継続について考えたい今、ここでの滞在活動を経験し、ヒントを探してみようと思いました。

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

芸術村の玄関にかけられている芸術村メンバーのみなさんの名札。
車の運転をしない私たち滞在者(丸山芳子とアマンダ・ビルバリ)のために、リサーチや制作活動のサポートばかりでなく、食料の買い出しやビューポイントの紹介、開催日の出演者の送迎なども助けていただきました。名札のほかにも「地域おこし協力隊」の池田麗奈さん、すばらしい音響環境を用意してくださった加藤英二さん、西会津の精神性ポイントを案内して下さった阪下昭二郎さん、通訳してくださった楢崎萌々恵さん、この滞在活動を受け入れ支援して下さった西会津町など、多くの方に支えられた滞在でした。

 

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

今年は国内外からの9名の参加者で開催いたします。 これまでのようなヴィジュアルアートに、身体や音による表現を加えて、互いがどのような反応を生み出すか試みます。

 

Amanda Billberg

Amanda Billberg :ダンス(スウェーデン)

初来日して福島県会津地方の山間部と東京での滞在を体験する予定です。その全く異なる環境が、アマンダさんの表現にどのように取り込まれるのか、公演が興味深いです。彼女のダンスからは、テクニックや美しさではなく、そこにヒトという生き物が存在しているという印象を受け、このプロジェクトに招くことを決めました。

 

Vigdis Haugtrø

Vigdis Haugtrø:絵画(ノルウェイ)

2013年の冬、このプロジェクトのスタートに参加したヴィグディスさんは、会津地方の大工さん達との恊働制作で茶室のような蔵をつくったり、インスタレーション作品を制作しました。今回は、ぜひ彼女の絵画の魅力を紹介したいと思います。この絵は「エルフ」、小さな妖精、いたずらな小人です。

Helena Junttila

Helena Junttila:絵画(フィンランド)

2015年の開催に来日参加し、会津地方の美しい秋を体感しながら精力的に制作したヘレナさん。その絵にしばしば登場する熊の存在を、会津でも感じ取っていたそうです。独自の神話の世界では、あらゆる生き物が言葉を介する事なく通じ合っているかのようです。作品は「トンボ」。

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