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来年の「精神の〈北〉へ」活動は、東京と福島を予定しています。
福島での活動のうち、未決定事項が残っている喜多方市の開催について、地元のキタ美実行委員会、地域おこし協力隊のお二人とアーティストとのZoomミーティングをしました。

作品理解の糸口としてのワークショップのこと、複数の会場のこと、支援資金の申請のこと…。やはり、メールよりも対話での相談は早い!参加作家の滝沢達史さんの手際の良いPC操作で、たちまち、開催スケジュール案などがまとまりました。このぐらいの人数だと、意見もアイデアも互いに作用しあって、新たなものが生まれてきます。

We had a Zoom meeting about “Spirit of North” 2021 activity in Kitakata City, Fukushima prefecture.
The opinions and ideas of local organizers and artists work together to create new things.

日曜日の9月20日、来年の「精神の〈北〉へ」展の開催の機会を得るために、都内のある美術館でのプレゼンテーション審査を受けました。1次の企画書類審査は合格、そしてこのプレゼンテーションが最終審査になります。
(結果がわかるまでは、美術館名は伏せておきます)

Covid-19の影響で、予定していたスコットランドでの交流展ができなくなってしまったため、計画変更。日本とスコットランドの参加者たちが、離れたままで深いコミュニケーションを継続して制作し、同時開催の展覧会を行い、会場同士をオンラインでつなげることにしたのです。
日本にも会場が必要になりましたが、今から来年の会場を探すのは至難の業。そこで、この応募に挑戦しているわけです。さて、10月に連絡される審査結果はどうなるか?

Yesterday, I gave a presentation at a museum in Tokyo to get the opportunity to hold an exhibition “Spirit of North: Confluence” next year.

Due to the influence of Covid-19, it is no longer possible to hold an exchange exhibition in Scotland together. Therefore, we decided that the participants from Japan and Scotland decided to keep communicating, hold exhibitions at the same time, and connect the venues online.

プレゼンテーションの画面1

プレゼンテーションの画面2

来年の開催にむけて、日本からの参加アーティストは、Covid-19による世界の深刻さがはっきりしてきた5月には4名が決まりました。そして少し後には、日本人アーティストの1対1の交流相手としてのスコットランドのアーティストも4名がきまりました。
誰もが近い未来の計画をたてることに慎重になるとき、私のお誘いを、喜んで受けてくれた参加者たちの心意気に感謝します。

日本からの新メンバー2人とは、作品は知っていたものの、初対面。メールでの話し合いではつかみきれない、この企画の肝心な話をしたくて、Zoomミーティングをやってみました。初めて顔を合わせ、それぞれの〈北〉のイメージを語ってもらうと、北志向の人間性が感じ取れて、この人選で良かった!と実感。

コロナ禍は、来年にも収束しているかどうか予測つきません。深く考え、状況に応じてフレキシブルに対応する感性と力量が試されます。

For next year’s exhibition, the participating artists from Japan and Scotland have been decided from May to June, when the seriousness of the world by Covid-19 became clear.
I would like to thank the participants for their willingness to accept my invitation when everyone is cautious about planning for the near future.

I knew their work but had never met two new members from Japan. I held a Zoom meeting because I wanted to talk about the essentials of this project. We talked about the image of each <North>, I could feel the North-oriented humanity in them. Great members we are!

It is unpredictable whether Covid-19 will converge next year. We are tested for sensitivity and ability to respond flexibly to the situation.

精神の〈北〉へ vol.10:かすかな共振をとらえて
Spirit of ‘North’ vol.10: Sensing Faint Resonances

開催スタートとして
9/20:セミナーとして4つの講演、夕方よりオープニングレセプションとパフォーマンスによって会場が開かれました。
9/21:はパフォーマンスデイとして、再び3つの公演がありました。

セミナー/ Seminar

•丸山芳子 & ヘレナ・ユンティラ/Maruyama Yoshiko & Helena Junttila(アーティスト・vol.10の共同オーガナイザー/Artist, Co-organizer of vol.10 Exhibition)
•石倉敏明 /ISHIKURA Toshiaki (芸術人類学 /Art Anthropology)
•モニカ・テンバリ/Monica Tennberg (Arctic Centre, University of Lapland)
•ソイリ・ニュステン-ハーララ /Soili Nysten-Haarala (Faculty of Law, University of Lapland)

展覧会オープニング パフォーマンス/Exhibition opening Performance

•ティッタ・コート&アウリ・アホラ/Titta Court & Auri Ahola
•ウッラ・キンヌネン(元フィンランドセンター文化・コミュニケーション担当官) 開催の挨拶 /Ulla Kinnunen (Former Head of Culture and Communications of The Finnish Institute in Japan): Opening the exhibition
•アマンダ・ビルバリ/Amanda Billberg
•丸山常生 /Maruyama Tokio

 

丸山芳子「精神の〈北〉へ」プロジェクト紹介とフィンランドとの深い関わり

丸山芳子 プレゼンテーション

丸山芳子「精神の〈北〉へ -発想の地に還る」
Maruyama Yoshiko [Spirit of “North” – Returning to the birthplace of the project concept]
2010年ラップランドの旅で、丸山が見出した北方同士を見つめる活動の発想は、プロジェクトとなってその地に還ってきた。

丸山芳子とヘレナ・ユンティラ

丸山芳子とヘレナ・ユンティラ

丸山とユンティラによる、互いの民族を知るためのQ&A。
“Q & A to know Japanese and Finnish” by Maruyama and Junttila.

 

石倉敏明

石倉敏明

石倉敏明 / Ishikura Toshiaki「Rethinking “North” from the Tohoku region of Japan」

開始したばかりのvol.10の各作品を引用しつつ、人類学的な視点で様々な比較を論じて見せた。


モニカ・テンベリ

モニカ・テンベリ

モニカ・テンバリ
Monica Tennberg [Negotiating Risk and Responsibility: Political Economy of Flood Protection in Northen Finland]

 

ソイリ・ニュステン-ハーララ

ソイリ・ニュステン-ハーララ

ソイリ・ニュステン-ハーララ
Soili Nysten-Haarala 「Risks and Benefits of Oil Production in the Arctic]

 

vol.10のために結成した”オーガナイザーチーム”の3人

vol.10のために結成した”オーガナイザーチーム”の3人

このプロジェクトと開催の経緯を紹介する、ロヴァニエミ美術館キュレーターのアイラ・フオビネン(左)
Aira Huovinen, the curator of Rovaniemi Art Museum introduced this project and the process to the exhibition vol.10.

 

photo: Jukka Tarkiainen

聴講するみなさん  photo: Jukka Tarkiainen

 

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ティッタ・コート&アウリ・アホラ

ティッタ・コート&アウリ・アホラ

ティッタ・コート&アウリ・アホラ

ティッタ・コート&アウリ・アホラ

ティッタ・コート&アウリ・アホラ

ティッタ・コート&アウリ・アホラ

ティッタ・コート&アウリ・アホラ「樹氷」/ Titta Court was my & Auri Ahola [Tykky]
予告なしに始まった音楽とダンスに、会場の人々が集まる。雪の重みでしなったり落雪で突然形を変えたりする様子が想像できた。 この開催のために創作したという表現に、試練に負けない東北の人々が重なって見えた。

 

ウッラ・キンヌネン

ウッラ・キンヌネン

ウッラ・キンヌネン(Tuusula 美術館館長、2011-16年の間フィンランド大使館の文化部門であるフィンランドセンター 文化・コミュニケーション担当官) 開催の挨拶
Ulla  (Museum and Cultural Director of the Municipality of Tuusula, Former Head of Culture at The Finnish Institute in Japan in 2011-2016): Opening the exhibition
ウッラさんは、このプロジェクトのフィンランドとの交流開催(2015年、福島県喜多方市)に来場し、各会場や滞在住宅を見て回られた。被災した東北各地を知るウッラさんの挨拶は、このプロジェクトの開始やvol.10開催の背景を伝えることとなり、聴く人々の胸を打った。

アマンダ・ビルバリ

アマンダ・ビルバリ

アマンダ・ビルバリ

アマンダ・ビルバリ

アマンダ・ビルバリ

アマンダ・ビルバリ

アマンダ・ビルバリ

アマンダ・ビルバリ

アマンダ・ビルバリ「キャット・トーク」/Amanda Billberg [Cat Talk]
猫に扮するアマンダが観客をひとり招き入れ、3つのテーマからひとつを選ばせて展開するダンス。

 

丸山常生

丸山常生

丸山常生

丸山常生

丸山常生「Reconnected things – Geos」 1日目
Maruyama Tokio[Reconnected things – Geos]  1st day

丸山常生

丸山常生

丸山常生

丸山常生

丸山常生

丸山常生

丸山常生「Reconnected things – Geos」2日目/ Maruyama Tokio[Reconnected things – Geos] 2nd day
この場の状況から生み出す行為によってあらわれる様々な偶然の現象が、そこにある作品と絡み合うさまを、居合わせた人々に気づかせる。

 

ロヴァニエミ美術館 Rovaniemi Art Museum

ロヴァニエミ美術館 Rovaniemi Art Museum

いよいよ開催の年になりました。
プロジェクト企画者の丸山芳子と、フィンランド作家で2015年に来日参加したヘレナ・ユンティラ、ロヴァニエミ美術館のキュレーター、アイラ・フオヴィネンは、フィンランドのロヴァニエミ美術館での開催をめざして、運営チームとして取り組んでいます。メールでの相談は2017年の秋から始まり、協力したり、励ましたり、喜び合ったり。とても良いチームワークです。

4月から8月の開催予定でしたが、観客が多く見込まれ、参加作家のリサーチにも適した季節の秋からの開催に変更することにしました。開催資金がまだ充分ではないため、半年の猶予期間にさらなる対策ができるように、ということも理由のひとつです。

フィンランドの美しい秋、とりわけ自然豊かな北方地域ラップランド地方へ旅し、「精神の〈北〉へ」の発想が生まれた理由を探ってみるのはいかがでしょう?

Korundi, Rovaniemi Art Museum
Lapinkävijäntie 4, 96100 Rovaniemi, Finland
https://www.korundi.fi/en/Rovaniemi-Art-Museum

 

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精神の〈北〉へ vol.8 かすかな共振をとらえて

福島市のギャラリー・オフグリッドでの開催初日の2月18日には、オープニング・トークイベントを行ないました。

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丸山芳子 x 赤坂憲雄「北へ、曠野へ」19:00~20:00

丸山芳子(美術家、精神の〈北〉へプロジェクト代表)
赤坂憲雄(民族学者、学習院大学教授、福島県立博物館館長、ギャラリー・オフグリッド運営委員会委員長)

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県外遠方からの方も含め、会場いっぱいの方々にご来場いただきました。
福島県立博物館の館長を務め「東北学」の提唱者でもある赤坂さんは、震災以降は東北の再生のために尽力し、発言されています。このプロジェクトは、赤坂さんや博物館の学芸員の方々の応援によってスタートを切ることができ、その後は自力開催を続けながらも、東北へ向ける思いには共振するものがあります。

 

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催しは、主催者「ふくしま自然エネルギー基金」代表の佐藤彌右衛門さんのご挨拶からスタート。

 

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トークイベントの前半は、丸山芳子によるプロジェクトの紹介プレゼンテーション。このプロジェクトをすべて目撃しているのは丸山以外にいないので、紹介できる良い機会です。赤坂さんからは、「このプロジェクトは丸山さんの作品」との言葉をいただきました。

 

 

東京都美術館での開催 撮影:川崎三木男

まちがいなく、過去6回のなかで最も充実した開催でした。なぜなら、今回の参加アーティスト9名は、このプロジェクトのスタートまでさかのぼって、これまでの海外からの参加作家や多様なかたちで関わりを持った表現者のなかから、今回のテーマにフィットするメンバーを組んだのですから。そして、視覚と聴覚と、動きによる時間の連なりや、音の反響による空気感、会場外から侵入する音や階上から様子をうかがう人の姿もが、表現空間を有機的に豊かにする要素となった、奇跡のような出来事でした。
毎日がライブ感のある開催で、連日連夜、翌日の準備が必要だったため、開催中の高揚を記すことができませんでしたが、「ニュース」の記録やfacebookページから想像してみてください。(撮影:川崎三木男さん)

 

 

 

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

【5月17日】午後、スウェーデンからアマンダ・ビルバリが到着。約1ヶ月の日本滞在で、西会津町(福島県会津地方)と東京での制作と発表をします。これまで海外からアーティストを招く場合は3人でしたが、今後の継続可能な活動方法を探り、コンパクト化を試みるため、今回は彼女ひとり。運営経費や気苦労が軽減される上に、じっくり向き合えたと思います。

 

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

【5月19日】西会津町に移動した翌日から、さっそく町のリサーチに取りかかります。実行委員会メンバーの阪下昭二郎さんの案内で、町の南側に点在する弘法岩屋、鳥追観音、蝦夷神社、大山祇神社などを回りました。アマンダは会津の風景の中でのダンスを映像作品にしたい希望があり、その視点でフィットする場を探します。
私(丸山芳子)の一番のおすすめはこの写真の大山祇神社。太い杉古木の参道は足元の石まで苔むして、野趣と神聖な気に満ちています。リーフレットに使った写真もこの場所。

 

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撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

【5月20日】翌日も撮影ポイントのリサーチ。芸術村事務長の星眞智子さんの案内で、今度は町の北部を回ります。星さんおすすめの弥生には、小川の周辺に神秘的な雰囲気が保たれている急流があります。アマンダはすぐにカメラに三脚をセットし、ダンスの身支度をして撮影に入りました。思いがけず撮影現場を目撃でき、被写体になるだけでなく、こうやって撮影も音の採取も編集もすべて自分でするアマンダの力量を再認識しました。

 

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影を終えて、映像や音の素材が揃ったアマンダは、編集作業に入ります。この映像は東京都美術館で彼女の作品として投影されます。

私たちが芸術村での公開日までに制作できるのは正味8日間程度。日々テキパキと事を進めないといけない。
そう思いつつ、この地域に滞在しているという貴重な機会をもっと地元の方との交流にあてたい!アーティストとしてはこのような機会だからこそ、思い切りここで表現したい!そして日数と経費の制限もある…こんなジレンマがいつもあります。

 

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

【5月21・22日】丸山芳子は、人間と人間以外のあらゆる存在が向き合う光景を、石膏片で表現する2組のジオラマで作ろうとしています。そのシンボルのように立つのは、人間の足と、人間が向き合おうとする「他者」の足。動植物やスピリットや伝承の神様や天体などのあらゆるものを象徴する「他者」の足には、ダンスで鍛えたアマンダの筋肉質で少し大きめの足がぴったり!ということで、型取りさせてもらいました。

 

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

【5月22日】地元のケーブルテレビが取材に訪れました。「北欧の国スウェーデンからやってきた美しいダンサーを、みんなで見に行きましょう!」という筋書か?ともかくアマンダをロマンチックに演出して撮って行きました。丸山の出番はこの作業シーンだけ。24日の放送を見て、アマンダはもっとマッチョなダンサーだよね〜ふたりで大笑い。

 

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影:丸山常生

撮影:丸山常生

【5月25・26日】廊下の水道前で石膏片をつくる丸山芳子から見える、アルミホイル片をつくるアマンダと、公演の音響環境を整える西会津サウンドネットワークの加藤英二さん。それぞれが作業中。

 

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

アマンダと矢部さんは映像用に暗幕を取り付け、丸山常生も芸術村入りしてパフォーマンス用のセッティング。

 

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

【5月27日】 公開イベント当日。午前中に伊藤勝町長と伊藤善文商工観光課課長が来場され、アマンダの映像に興味を示して行かれました。

 

撮影:アマンダ・ビルバリ

撮影:アマンダ・ビルバリ

出演者のひとりがアクシデントで遅れそう!肝を冷やしたけれど、矢部さんの機転で別の交通手段が提案され、切り抜けられました。よそものの自分たちだけだったらこうは行かないはず。地元の方々との恊働の大切さを実感します。
あとはみんなの無事の到着を待つだけ。
(開催の様子は「ニュース」をご覧下さい。)

撮影:アマンダ・ビルバリ

撮影:アマンダ・ビルバリ

西会津国際芸術村は、最寄り駅や繁華街から車で15~20分の距離がある山間地域寄りにありますが、そのユニークな活動と発信力によって注目され、多様なメディアで紹介されています。
ディレクターの矢部佳宏さんには2014年から「精神の〈北〉へ」に関わっていただいています。運営人材や資金の確保が容易ではない現状におけるプロジェクトの継続について考えたい今、ここでの滞在活動を経験し、ヒントを探してみようと思いました。

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

芸術村の玄関にかけられている芸術村メンバーのみなさんの名札。
車の運転をしない私たち滞在者(丸山芳子とアマンダ・ビルバリ)のために、リサーチや制作活動のサポートばかりでなく、食料の買い出しやビューポイントの紹介、開催日の出演者の送迎なども助けていただきました。名札のほかにも「地域おこし協力隊」の池田麗奈さん、すばらしい音響環境を用意してくださった加藤英二さん、西会津の精神性ポイントを案内して下さった阪下昭二郎さん、通訳してくださった楢崎萌々恵さん、この滞在活動を受け入れ支援して下さった西会津町など、多くの方に支えられた滞在でした。

 

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

撮影:丸山芳子

今年は国内外からの9名の参加者で開催いたします。 これまでのようなヴィジュアルアートに、身体や音による表現を加えて、互いがどのような反応を生み出すか試みます。

 

Amanda Billberg

Amanda Billberg :ダンス(スウェーデン)

初来日して福島県会津地方の山間部と東京での滞在を体験する予定です。その全く異なる環境が、アマンダさんの表現にどのように取り込まれるのか、公演が興味深いです。彼女のダンスからは、テクニックや美しさではなく、そこにヒトという生き物が存在しているという印象を受け、このプロジェクトに招くことを決めました。

 

Vigdis Haugtrø

Vigdis Haugtrø:絵画(ノルウェイ)

2013年の冬、このプロジェクトのスタートに参加したヴィグディスさんは、会津地方の大工さん達との恊働制作で茶室のような蔵をつくったり、インスタレーション作品を制作しました。今回は、ぜひ彼女の絵画の魅力を紹介したいと思います。この絵は「エルフ」、小さな妖精、いたずらな小人です。

Helena Junttila

Helena Junttila:絵画(フィンランド)

2015年の開催に来日参加し、会津地方の美しい秋を体感しながら精力的に制作したヘレナさん。その絵にしばしば登場する熊の存在を、会津でも感じ取っていたそうです。独自の神話の世界では、あらゆる生き物が言葉を介する事なく通じ合っているかのようです。作品は「トンボ」。

Helena Junttila@金忠座敷蔵

ヘレナ・ユンティラ Helena Junttila @金忠座敷蔵

Helena Junttila 桐に油彩

ヘレナ・ユンティラ Helena Junttila  桐に油彩

 

アンッティ・ユロネン Antti Ylönen @絵本の蔵

アンッティ・ユロネン Antti Ylönen @絵本の蔵

アンッティ・ユロネン Antti Ylönen 三島町特産の桐の木を使用

アンッティ・ユロネン Antti Ylönen 三島町特産の桐の木を使用

 

千葉 奈穂子 Chiba Naoko @ギャラリーモーツァルト

千葉 奈穂子 Chiba Naoko @ギャラリーモーツァルト

千葉 奈穂子 手漉き和紙にサイアノタイプ写真技法でプリント

千葉 奈穂子 Chiba Naoko 手漉き和紙にサイアノタイプ写真技法でプリント

 

丸山 芳子 Maruyama Yoshiko @村藤店蔵

丸山 芳子 Maruyama Yoshiko 「羽化」@村藤店蔵

丸山 芳子 Maruyama Yoshiko サナギから飛び立つ蝶に東北の人々を重ねて

丸山 芳子 Maruyama Yoshiko サナギから飛び立つ蝶に東北の人々を重ねて

 

カイサ・ケラター Kaisa Kerätär 会津地方のホーリースポットを探る

カイサ・ケラター Kaisa Kerätär 会津地方のホーリースポットを探る

カイサ・ケラター Kaisa Kerätär フィンランドと会津地方を共振させたトークセッション

カイサ・ケラター Kaisa Kerätär フィンランドと会津地方を共振させたトークセッション

福島県三島町のながめ

福島県三島町のながめ Mishima-machi, Fukushima prefecture

プログラムの詳細は:「活動の記録」→「活動の計画vol.4&5」をクリック
日々の滞在活動記録は:トップページから「精神の<北>へ facebookページ」へ
・・・・・・・・・・・・・・・
The detail of the program: “archive” → “vol.4 & 5”
The document of the stay and activity: Top → Facebook page

農村婦人の家   撮影:丸山常生

農村婦人の家   撮影:丸山常生

この秋の活動に向け、三島町に続き、喜多方市に滞在場所を探しています。
フィンランドからのアーティストと研究者を招き、東北出身のアーティストと共に、三島町と喜多方市を滞在拠点として会津地方を廻る計画です。
森に精霊をみる人たちが、会津をどんなふうに感じるのだろう?
そのような対話を、人々と共有することを期待しているのです。

We are looking for the suitable residence in Kitakata, Fukushima for the activity in this autumn.

農村婦人の家    撮影:丸山常生

農村婦人の家    撮影:丸山常生

古民家    撮影:丸山常生

古民家    撮影:丸山常生

古民家    撮影:丸山常生

古民家    撮影:丸山常生

喜多方には、交通の便さえ良ければ多目的活用にふさわしい、たくさんの魅力的な施設や空き家が、活かされる時を待っていることがわかります。
中心市街からは遠いため、車がないと難しい。通いやすかったら、すごくいいのですが…

三島町のキーパーソンと

三島町のキーパーソンと

この秋、森や木との精神的な結びつきを持つフィンランドからアーティストたちを迎えるので、滞在のスタートは、豊かな自然を体感できるエリアにしたい。 そんなわけで、三島町を訪れました。キーパーソンの方々にプロジェクトについて説明すると、さまざまな提案を出してくださり、滞在日数が足りないぐらい!

木造家屋の落ち着いた町並み

木造家屋の落ち着いた町並み

各家に屋号の表示が

各家に屋号の表示が

空き家を再興した交流体験施設「のんびり館」

空き家を再興した交流体験施設「のんびり館」

三島町生活工芸館

三島町生活工芸館

問題は、木彫のアンッティの作業をどこでするか…?
三島町生活工芸館に、うってつけの工房がありました。

まもなく開催のシンポジウムの詳細です。ぜひお出かけ下さい。

 

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2日目は、アーティストがリサーチした異なるフィールドの実践者が登場。アーティストの体験を織り込みながら、そのフィールドを引き出していく、3組のクロストークです。

(各20分のトークからの抜萃です。詳しくは、来年発行の記録集にてご紹介します。)

 

小野良昌(アート)x 長谷川浩(有機農業)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『早稲谷へ行ってみよう〜』

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小野:今日のお客さんの中で農業をやっている方は、思った以上に少ないのが現実です。僕自身でも農業に対する距離感があって、なかなか分からないと思っていた中で、長谷川さんに教えてもらったイギリスのドキュメンタリー番組「未来への農場」がYouTubeで見れます。なぜ長谷川さんが今早稲谷で農場をしているか分かるかと思います。なぜ自分の実家である農場を継ぐことにしたか、どんな農場にしたいかを実践しようとしている女性のドキュメンタリーです。
農学博士の長谷川さんは、何をご専門にしていたのですか?

長谷川:有機農業という、除草剤の農薬を使わなくても相応のお米がとれるような開発に取り組んでいます。地球上に今70億人を超える人がいて、非常に文明的な生活をすることは、地球にある資源をいっぱい使って自然を酷使しているのです。このまま行ってしまうと石油も少なくなって(価格が)段々高くなると、便利な生活を続けられなくなるのではないかということを世界的にいろいろな人が警告して、“ピークオイル”と言っているのです。
石油がなくなるとごく少数の人が農業で他の人を支えることはできなくなるということです。農業だけではなく、雪国の喜多方での暖房にほとんどの方が使っている灯油がもし1リッター1000円になったら…ということを真面目に考えているのが私で、間伐材を燃やしてこの前の冬は灯油を一滴も使わずに何とか過ごすことができました。

小野:長谷川さんに会った時は正直あんぐり笑えるような話をしてくれまして、滅茶苦茶面白いなと…。・・・普段生活している方が何を考えているのか、相手のことに対してどれほど好奇心を持つかとか、じゃあ自分は何を考えているのか?・・・例えば子供がいたとしたら、自分の息子娘は何を考えているのだろうという好奇心が「精神の〈北〉へ」というコンセプトへの大きなワンステップになるのではと考えています。その中で長谷川さんのやっていることは一気に10ステップぐらい勝手に発進しているのが面白く思います。
それで馬2頭は、実際に実践していく中でペットではないですよね?

長谷川:馬糞が良い肥料と燃料にもなるので馬を飼っているのですが、「なんでお前は乗らないのだ」と言われるので、そろそろ乗ってみようかと… (笑)。私の住んでいる早稲谷でも60年前に遡ると馬が20頭、農業とか運搬に使われていまして、餌として雑草を食べさせていたのです。この季節になると葛(クズ)が繁殖してはびこる厄介者の代表格ですが、馬にとって葛は大好物で、よだれを垂らしながら食べるのです。こんな厄介物が、馬を飼ったらこんなご馳走に変わるのか!ということが発見でした。

小野:2年経って、元々始めようとした早稲谷の生活は長谷川さんにとってどの辺のポジションにあるのでしょうか?

長谷川:
何パーセント達成したかと考えるとあまり楽しくないので、・・・想定外のことがあっても楽しくやっていくということ、結局楽しい顔をしていないと他の方も集まってきてくれないので、顔はいつも笑うようにしています。

小野:
ストレートに、長谷川さんにとって「精神の〈北〉へ」とは何か?言葉で。

長谷川:東北は農業の面から言うと食べ物を作って都会に送る、農家の働き手も都会に送るというところだったのですよね。だから「精神の〈北〉へ」というとそこが大事なところかなと思いました。
もうひとつ、私がたまたま移り住んだ山都町は昔交通の要衝で、栄えた時代は芸術家のパトロンとして、喜多方よりずっと芸術家が集まったそうです。町名のとおり山の都ですかね、山が栄えて、農業も栄えて、交通も栄えた。そういう芸術が栄えるような田舎であり続けるということはゆとりがあることだし、それ以前の問題として、戦争がない平和で豊かな国・地域であるということなので、芸術が栄える田舎というものになっていければなということが私なりの一つの答えかと思います。

 

千葉奈穂子(アート)x 山中雄志(歴史考古)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『北を向いて、歩こう』

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千葉:この場所(高森山という県道・会津若松―北塩原線の西側の小高い丘)の古墳は喜多方市内の常世地区という場所なのですが、名前から衝撃的なインパクトをまず感じましたし、丘全体が墓地になっていることに衝撃を受けて、見守ってもらっているというか見下ろされているという構図にまずびっくりしました。

山中:特に古い古墳というものは自分が支配する地域、もしくは常に見られる小高い地域に作るのが普通でして、不思議なことに古墳のある所はその後も、聖なる場所とか特別な場所というのがあるのでしょうかね、お墓やお寺や神社があることは非常に多いです。
古墳時代の文化の中心は関西で、それから見るとこちらはずっと北の方になります。
漢字を使う所では“北”はネガなイメージがありまして、北という字はもともと背くとか逃げるとかあまり良いイメージがないみたいですね。これは中華思想によるところもあるのですが、あと漢民族が北からの狩猟民族や北方民族に酷い目にあっているので北に対してそういうイメージができたのではと思います。
北に住む人のことを大和朝廷は蝦夷(えみし)と呼んでいるのですけれど、蝦夷というのは勇猛な猛き人々、禽獣に近いイメージで古代は捉えられていて、時代が下るに従ってそういうイメージは凄く強くなります。

去年掘られた家西遺跡は古墳時代の最も初めの頃の1700年ぐらい前の時代の、ちょっと物議を醸し出しそうな遺跡なのです。・・・北陸や関東から入ってきた土師器(はじき)というツルツルの土器と、弥生時代になってからも頑固に縄目をつける東北の土器が、一緒に出てきてしまいました!この両方は一緒に出てはならないくらいの問題があり、どれくらい違和感があるかというと、私がここで喋っているよりもっとアウェー感、仏壇の中に十字架が立っているような感じですね。(笑)要するに、ここにはどうやら四方八方からものが入っている状況だった模様です。の文化というのは消えないできちんと生きている、意識を持ち続けていると言えるのでしょうかね。

千葉:私は喜多方のとても気になる山首神社(正式名称:那麻利七世社)を訪ねたのですが、大変な雰囲気を醸し出していまして…、東北東を向いていましたけれども、あの辺はどのような所なのでしょうか?

山中:会津地方では最北端にある古墳群で、・・・普通だったら東か南を向くのですが、喜多方地方には北向きの神社が5、6社ありまして、その中でも北東を向いている奇妙な神社ですね。喜多方の神社が何故北向きになるかというと、腰王神社というのがあるのですが、それは北を向いていまして、北からの民族が攻めて来るのを抑えるために北を向いているという伝承のある神社ですね。この山首神社、参道の北東側に大仏山があります。常に北の方からの通路・・・その抑えなのかなと私は勝手に妄想しておりました。

千葉:私の出身は岩手県水沢市の跡呂井地区というところで、小さい時からアトロイとかアテルイの話は聞いていたのですが、高校三年生の時に巣伏の戦いから1200年祭があって、その頃から水沢地区とか岩手県の方では結構アテルイを注目しているような感じがしました。北の勇者みたいなところも考えてみたいなと思っています。
最後に一言、山中さんにとって“北”とはなんでしょうか?

山中:“北”というのはうんと大事です。北極星。多分北極星がなければ文明は生まれておりませんし、船も動けない。あとは人間というのはアフリカから出たと言われていますが、不思議なことに北を目指すところがあります。“北”というとある意味では指針、進む方向性を導いてくれるところです。私の歴史の分野で言うなら、まだまだ謎の部分が沢山ある、そういう意味で宝の山。そういうところです。

 

丸山芳子(アート)x 菅家博昭(地域学研究)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『けものよ、ここにヒトがいます』

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丸山:最初にアーティスト3人が昭和村に菅家さんを訪ね時に、山道で見つけた獣の糞が熊かも知れないということで、菅家さんが山に向かって発した声が、このトークのキャッチコピーに「けものよ、ここにヒトがいます」とつけた理由のひとつなんです。

菅家:南会津では毎日熊が出て、昭和村でも昼間から稲穂を食べていますね。人口圧が減るのです。人が山に入らない、火を使わない文明になりつつありますよね。獣は見ていたはずなのですよね、「人が住んでいるところから煙が出ているからちょっと怖い、気をつけねば」と。今はそれがないので、結界が分からなくなって簡単に獣が入ってきます。“北”というのは野生、ワイルドなものですから、人間の圧力で押し込んでいたものが、今押し返されている。野生の立場からすると復元で元に戻るだけかなと思います。

丸山:キャッチコピーのもうひとつの理由は、昭和村の自然現象がかなりインパクトがあったこと。一面の空と一面の大地という場。雨の後、水蒸気がワアッと一斉に空に還っていく現象。そういう環境の中に身を置いて、自分の存在の基本に立ったみたいな印象だったんです。
それと、菅家さんのご専門の地域学というもので、猟師さんから聴き取った沢の名前、岩の名前を一つ一つデータ化して、後に残すために尽力されたこと。それから「会津物語」。

菅家:昭和村でも沢山遺跡があり、8000年前から人々が住んでいるところに、現代どうして人が継続して暮らせないのかというのが私の疑問で、専業農家なのですが、やっていけるのではないかなと。その時に福島県立博物館に赤坂憲雄さんがいらっしゃって、・・(促されて)聴き書きを中心としてお年寄りからいろんなお話を聴くことで会津学という雑誌を出すことになったのですね。3年前からこれも赤坂さんの提案で朝日新聞に「会津物語」を書いたのですが、まず語ってくれたお年寄りの実名で出す。育った社会背景を認識して頂くために、何年生まれとかを書く。語り言葉で記録するということをやりました。赤坂さんの注文は合理性のない話、科学的でない話、不思議な話ということ。科学的なものしか認めないというのを見直した方が良いというのが全体のトーンになったと思います。

丸山:話に出てくる頻度が高いのが狐ですが、話者は狐の姿を実際は見ていないのですよね。

菅家:「狐に化かされた」と言うと納得され、社会通念として追求しないという合意が多分あったと思うのですね。狐に盗られたということで…多分落としたり、買わないで酒を飲んだかもしれないですね。(笑)もう一つ、「買い物に行ったけど、お金がないので買えない」のではなく、「買ってきたのだけれども途中で落とした」というのは素敵な表現だと思います。

私は20代で農家をやる時に、宮沢賢治が農業指導者としてやっているので結構行きました、花巻には。彼は農をどう捉えていたのか?私もギターを弾いて歌を作ったりしているので、音楽や芸術論とかもやっている賢治が非常に気になりますね。

丸山:私達アートをやる側からのリサーチの対象となって、どのような感想をお持ちですか?

菅家:アーティストとか理屈でない回路で伝える仕事をしている人達の役割というのがあると思うのです。ですからいろんなところを案内してどういう形になるのかを見るのは非常に楽しみで、今回もこういうふうに直感に訴える、感性に訴える手法を持っている。社会の見えない変化を提示できますよね、アーティストは文字で書いている人以上に敷居が低い、訪れやすい表現方法なので。だからああいう(作品を指して)聴き書きした地名を張り込んだような表現をされるとは思ってもいなかったのですが、そういうこともやっていいんだ!単純だな…と(笑)。あともう一つ、懐かしい色というか、記憶の色、人々の記憶を固定するのですが、上手く表現しているのではという感じを受けています。

丸山:では、菅家さんがイメージされる“北”とは何でしょうか?

菅家:私が10代の時に感じている“北”というのは、差別される方向ですよね。例えば職業で言うと農業、住んでいる場所であると、都市から言うと農村だし、農村の中で言うと平坦地より山間地…と、向いている方向がネガティブというかマイナスの方向でしょうね。
20代30代になってきますと、“北”というと希望の光というか、目指すべき方向。だから背骨みたいのものですかね。見えないけれど大切なもの、そういうのが“精神の北”ですね。特に“精神”と付くのがとても大事な気がします。

 

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クロストークの後、観客の方からの質問に、6人6通りの答えをお返ししました。

さて、今年度のもうひとつの活動がシンポジウムです。
ひとりひとりの〈北〉への眼差し、どのような“精神の〈北〉”が語られるのか?ご期待下さい。詳細が決まり次第、このサイトでお知らせ致します。

 

あなたにとって、内なる〈北〉、精神の〈北〉とは?

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