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それぞれの北、ひとつの共鳴

北に惹かれる人々には、民族の違いを超えて共通の精神性があるのではないだろうか?

「精神の〈北〉へ」プロジェクトはこの探究心から、東北地方を含む世界の北方の人、北を志向する人、多様な専門分野の人が向き合い、方角の北ではない「心に思い描く北、精神的ディメンションの北」とは何かを探っています。 それは、人類という生物の北に対する志向について知ろうとする協働探求なのです。

東日本大震災を契機に開始したこのプロジェクトは、災害で大切なものを失った東北の人々、とりわけ、将来に渡って重い負担を負う福島の人々が、このプロジェクトを通して自らのアイデンティティを取り戻すことへの応援でもあります。

これまでに、福島県会津地方に残る文化財の蔵群や、東京都美術館、フィンランドのロヴァニエミ美術館などで開催した国際交流展や、シンポジウムやトークイベントを通して、参加アーティスト同士や開催地の方々との対話を続けて参りました。 

世界が共生や調和と逆行していく昨今、わかり合うことの本質に迫る活動の意義を、いっそう強く感じます。アーティストは開催地の人々や地域に向き合い、自分の作品を紹介しながら、日本・フィンランド・アイルランドの三ヵ国それぞれの故郷の精神文化や、アーティスト自身が北に抱くものについて、互いに比較しながら、理解を深めていきます。

前回の開催は、コロナ禍によってスコットランドとの交流活動が何重にも阻まれた2021年でした。それを乗り越えるために出し合った知恵と工夫のなかには、今後の活動にとっての可能性という果実も見出すことができました。

そして、今年の「精神の〈北〉へ」は、vol:15 喜多方展、vol.16 東京展。日本—フィンランド—アイルランドの3カ国出身の5名のアーティストによる交流活動です。
昨年までの開催を振り返ってみて、じっくりとアーティスト同士や地域や人に向き合うというこのプロジェクトの根幹が、ときには展覧会が目的のようになる開催もあったため、今年は、基本に還るつもりで取り組みたいと思います。

⚫︎喜多方市の2会場の、異なる趣き

・ギャラリー金田:
「蔵のまち喜多方」の姿を再生させようと設立された市民有志の会社(蔵の街喜多方株式会社)が手がけた第1号、市内最古のレンガ蔵です。

・大和川ミュージアム四方(よも)の良志久庵(らしくあん):
大和川酒造店内に位置する二間続きの美しい座敷です。

雄大な山並みと温泉と美酒と地元料理と。ゆったりした時間が流れる蔵のまちに、現代アートの共鳴を試みます。

⚫︎トークセッション

5名のアーティストと川延安直氏(会津地域文化藝術フォーラム アドバイザー / NPOはるなか 理事長)

川延さんは、福島県立博物館の学芸員当時、東北の震災直後にこのプロジェクトの開始のきっかけをつくって下さった恩人といえます。その後の「精神の〈北〉へ」の活動を、ずっと目撃し応援した方との対話から、なにが見えてくるでしょうか。

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⚫︎東京での開催

いりや画廊(台東区入谷)で、高い天井の広々とした空間の1階と小部屋の2階で展示します。ギャラリーならではの自由度が高い設営条件のなかで、どのように5名の表現が個を発揮し、同時に、喜多方での交流活動を経てどのように響くものが生まれるでしょうか。

⚫︎トークセッション

5名のアーティストと石倉敏明氏(芸術人類学・神話学 / 秋田公立美術大学准教授)

石倉さんは、今回の日本とフィンランドのアーティストと共に、フィンランドのロヴァニエミ美術館での「精神の〈北〉へ vol.10」開催に参加されました。
アーティスト達が今年の活動を総括して語る実感に、人類学者からはどのような共鳴を導き出すでしょうか。

 

 

 

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