それぞれの北、ひとつの共鳴
北に惹かれる人々には、民族の違いを超えて共通の精神性があるのではないだろうか?
「精神の〈北〉へ」プロジェクトはこの探究心から、東北地方を含む世界の北方の人、北を志向する人、多様な専門分野の人が向き合い、方角の北ではない「心に思い描く北、精神的ディメンションの北」とは何かを探っています。 それは、人類という生物の北に対する志向について知ろうとする協働探求なのです。
東日本大震災を契機に開始したこのプロジェクトは、災害で大切なものを失った東北の人々、とりわけ、将来に渡って重い負担を負う福島の人々が、このプロジェクトを通して自らのアイデンティティを取り戻すことへの応援でもあります。
これまでに、福島県会津地方に残る文化財の蔵群や、東京都美術館、フィンランドのロヴァニエミ美術館などで開催した国際交流展や、シンポジウムやトークイベントを通して、参加アーティスト同士や開催地の方々との対話を続けて参りました。
世界が共生や調和と逆行していく昨今、わかり合うことの本質に迫る活動の意義を、いっそう強く感じます。アーティストは開催地の人々や地域に向き合い、自分の作品を紹介しながら、日本・フィンランド・アイルランドの三ヵ国それぞれの故郷の精神文化や、アーティスト自身が北に抱くものについて、互いに比較しながら、理解を深めていきます。
2025.09.26